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March 26, 2015

本と暮らせば

読書人は、年を取らない。

「本と暮らせば」出久根達郎著(草思社)

大好きな名手のエッセイ集を読む。「日本古書通信」初出が主体で、本にまつわるテーマが多く、著者がさりげなく紹介する知識が楽しい。明治大正の出版社の重版数戦略、昭和初期にパリの日本人が通った「堀部安兵衛」の謎、日本のエイプリルフール事始め…。

内田百閒が昭和4年法政大学にできた航空部の初代会長を務め、この部の学生が羽田の公式の使いはじめとして訪欧飛行を敢行したとか、びっくりの話題が満載だ。アンソロジーを編むための調べもののこぼれ話とか、小説などの解説として執筆した文章もある。そしてさらさらと読むうちに、本というメディアの豊かさ、読書の楽しみを思う。(2015・3)

March 20, 2015

2045年問題-コンピュータが人類を超える日

カーツワイルの予言では技術的特異点は2045年だといいます。これからほぼ30年先の未来です。現在、私たちが当たり前のように使っているインターネットやスマートフォンなどにしても、30年前に予測できた人がいたでしょうか。30年たてば、予測もつかないことが現実になります。

「2045年問題 コンピュータが人類を超える日」松田卓也著(廣済堂新書)

コンピューターの能力が人類全体をはるかにしのぎ、未来像が非連続に変化してしまう「技術的特異点」。宇宙物理学者が綴るSFチックな未来像を、電子書籍で。

膨大なデータを分析して思いもつかない結果を導き出すなど、ITの進化はどんどん加速している。技術に人間が振り回され、セキュリティーが危機に瀕し、知的労働の雇用が奪われるといったミゼラブルな予測が大流行だ。だが著者はむしろ、積極的に脳とコンピューターを接続した、いわば「拡張人類」の出現を前向きにとらえる。
どちらがより実現しそうなのか、にわかに判断はつかない。ただいずれにしろ、未来は現在の社会の仕組みの延長線上にはなさそうだ。(2015・3)

March 13, 2015

短編集 半分コ

戦争の時代ってのは、花を愛でるような人間が目ざわりなんだよ

「短編集 半分コ」出久根達郎著(三月書房)

文庫サイズで函入り、1961年から続いているという個性的な「小型愛蔵本シリーズ」の一冊。手のひらに収まるサイズと、著者自ら筆をとったパンダの装画がなんとも可愛らしい。

収録作品はみな温かく、同時にどこか苦みを含んでいる。例えば「空襲花」。大学の写真部仲間の男女が、水やりのバイトで深川へ赴く。なんてことない2階建て民家だが、ベランダから屋根にかけて見事な朝顔が生い茂っていた。ちょっと理屈っぽい口論をしていた2人は、可憐な花園から、歴史のうねりに直面した家主の秘めた反骨を知る…。

名もない庶民の暮らしの厳しさや、誰もがいつかは味わう老いの寂しさ。そんな苦みがあるからこそ、しみじみとした余韻を残すのだろう。雑誌や電子文芸誌に掲載された16編を収録。芸術選奨受賞作。(2015・3)

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