談春 古往今来
俺はほんとに偶然と奇跡の産物なんで。
「談春 古往今来」立川談春著(新潮社)
入門30周年、古典を語らせたら当代きっての実力派、チケットがとれない人気噺家が、2003年から10年の間に複数のメディアに掲載されたインタビュー、対談、エッセイ25編をまとめた。書き手泣かせの、屈折していて、なかなかに面倒なキャラが魅力的だ。
平成落語ブームに対する反発、2006年の7夜連続独演会への意気込みを語る導入部分は、気負い満々。2008年に著書がヒットした後あたりから、読む側の期待を時にはぐらかすような口調が多くなる。
落語に関する深い思索、強烈な自負と、それとは裏腹なネガティブ思考や不安。それは人気芸人ならではの、移り気な世間との距離のとり方なのか。
やがて2012年、偉大な師匠立川談志と、敬愛する18代目中村勘三郎を相次いで失って、相変わらず屈折しながらも、前に進んでいくしかない、という覚悟がのぞきはじめる。嘘をつく商売だから、発言はいつも虚実ないまぜ。でも実は、すべてが本音なのかも、と思わせる。これからも茶目っ気と凄みで、たっぷり楽しませてほしいものです!
鈴木心のモノクロ写真が端正だ。単独公演演目リスト付き。(2014・12)
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