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October 09, 2014

ドイツ中興の祖ゲアハルト・シュレーダー

製造コストの伸びに歯止めをかけなければ、企業は生産施設の国外移転を加速し、国内の失業率がさらに上昇する。シュレーダーが「アゲンダ2010」を実行した大きな理由の一つは、グローバル化による国内雇用の喪失だった。

「ドイツ中興の祖ゲアハルト・シュレーダー」熊谷徹著(日経BP社)

NHK出身で、1990年からミュンヘンに住むフリージャーナリストが、東西統一の負荷を乗り越え、欧州危機のなか一人勝ちの様相を呈したドイツの原動力を解説する。中核はシュレーダーが首相時代の2003年に打ち出した、歴史的な社会保障削減策だ。

長期間失業している人へのサポートを削って、自立を促したほか、雇用規制を柔軟にした。ビスマルク以来の伝統である手厚い年金や医療の制度にも、大胆にメスを入れた。
成熟した国家がグローバル経済を生き抜くには、雇用コストの抑制を避けては通れない。これは国を問わず直面する、厳しい現実だ。改革後のドイツでは失業率が改善し、企業は負担が軽くなって競争力を取り戻した。
だがその評価は決して定まっていない。企業は復活しても、働く側では低い賃金にあまんじる「ワーキングプア」が増大しただけ、という批判が強い一方、まずは働き始めることが、暮らしを向上していくステップになるという指摘もある。

有権者に負担を強いる評判の悪い政策を、なぜ実行できたのか。著者はシュレーダーが本来、改革に抵抗する立場の左派SPDの所属だったからこそ、と解説。これは民主党政権が消費増税を決めた、日本の政治状況とも重なる気がする。
さらに著者は、貧困家庭から首相にまで上り詰めたシュレーダーのバックグラウンドと、強い信念に注目する。彼は結局、改革の果実を得る前に政界を追われ、企業経営者に転じて批判を浴びることになってしまう。いつの世も、歴史を動かすのは「変人」ということか。

もちろんドイツの道筋を、単純に日本にあてはめるわけにはいかない。著者はもともとドイツの社会保障が手厚かったため、メスをいれてもなお、雇用のセーフティネットなどは日本を上回ると指摘する。そのうえで、様々な示唆があることは間違いない。(2014・10)

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