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October 26, 2014

非線形科学 同期する世界

ばらばらに揺れていた二つの振り子時計の振り子が、互いに示し合わせたかのように、やがてぴったりと歩調を揃えることに気づいて、アイザック・ニュートンと同時代の偉大な科学者クリスチアーン・ホイヘンスは驚嘆しました。時計はなぜ互いを「知って」いるのか?

「非線形科学 同期する世界」蔵本由紀著(集英社新書)

同期現象を研究してきた京大名誉教授による、一般向け解説を読んでみた。世の中でみられる、複数の事象が協調する現象の不思議。

時計やろうそくの火あたりはともかく、大勢が橋の上を歩くリズムや拍手まで同期していくとなると、素人には正直、なかなかすっと理解できない。
しかし生命現象のような入り組んだシステムを動かすとき、中央でのコントロールより負担が軽い「自律分散制御」に、同期の概念が役立つという説明を読むと、その重要性に気づかされる。

同期の発想が、ロボットや信号ネットワークなどに応用され、展開していくのが楽しみだ。科学ノンフィクションは普段なかなか手が出ないし、一般向けの新書でも読み通すのにひと苦労なのが我ながら情けない。だけど理解不足ながら、視野が広がるような快感があるなあ。(2014・10) 

October 09, 2014

ドイツ中興の祖ゲアハルト・シュレーダー

製造コストの伸びに歯止めをかけなければ、企業は生産施設の国外移転を加速し、国内の失業率がさらに上昇する。シュレーダーが「アゲンダ2010」を実行した大きな理由の一つは、グローバル化による国内雇用の喪失だった。

「ドイツ中興の祖ゲアハルト・シュレーダー」熊谷徹著(日経BP社)

NHK出身で、1990年からミュンヘンに住むフリージャーナリストが、東西統一の負荷を乗り越え、欧州危機のなか一人勝ちの様相を呈したドイツの原動力を解説する。中核はシュレーダーが首相時代の2003年に打ち出した、歴史的な社会保障削減策だ。

長期間失業している人へのサポートを削って、自立を促したほか、雇用規制を柔軟にした。ビスマルク以来の伝統である手厚い年金や医療の制度にも、大胆にメスを入れた。
成熟した国家がグローバル経済を生き抜くには、雇用コストの抑制を避けては通れない。これは国を問わず直面する、厳しい現実だ。改革後のドイツでは失業率が改善し、企業は負担が軽くなって競争力を取り戻した。
だがその評価は決して定まっていない。企業は復活しても、働く側では低い賃金にあまんじる「ワーキングプア」が増大しただけ、という批判が強い一方、まずは働き始めることが、暮らしを向上していくステップになるという指摘もある。

有権者に負担を強いる評判の悪い政策を、なぜ実行できたのか。著者はシュレーダーが本来、改革に抵抗する立場の左派SPDの所属だったからこそ、と解説。これは民主党政権が消費増税を決めた、日本の政治状況とも重なる気がする。
さらに著者は、貧困家庭から首相にまで上り詰めたシュレーダーのバックグラウンドと、強い信念に注目する。彼は結局、改革の果実を得る前に政界を追われ、企業経営者に転じて批判を浴びることになってしまう。いつの世も、歴史を動かすのは「変人」ということか。

もちろんドイツの道筋を、単純に日本にあてはめるわけにはいかない。著者はもともとドイツの社会保障が手厚かったため、メスをいれてもなお、雇用のセーフティネットなどは日本を上回ると指摘する。そのうえで、様々な示唆があることは間違いない。(2014・10)

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