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August 09, 2014

ドレスデン逍遥

波乱万丈の人生を歩む人がいるように、波乱万丈の過去を満載した建造物というものがある。たぶんこの聖母教会は、その優しいたたずまいの中にとりわけたくさんの物語を懐いている、世界でも稀な建造物の一つに違いない。

「ドレスデン逍遥」川口マーン恵美著(草思社)

夏のドイツ観光の予習として、ベルリンに続いてドレスデンの歴史ガイドを読んだ。「スローターハウス5」の印象が強い古都のドラマを、豊富な美しい写真とともに味わう。
やはり2次大戦時、美しい文化都市を徹底して破壊した爆撃の記録があまりに壮絶で、強い衝撃を受ける。しかしそれ以外の物語も、とても興味深い。
17世紀から18世紀にかけてザクセンを率いたアウグスト強王の、華麗過ぎる女性遍歴と、毅然として駆け引きしたコーゼル伯爵夫人の痛快さ。19世紀にヴェーバー、ヴァーグナーの作品を上演し、ドイツ文化の誇りを担ったゼンパーオペラ。
そんな都市の足跡を知れば、東ドイツ時代、長く廃墟のままだった聖母教会を巡る市民たちの複雑な思いも、少し理解できる気がしてくる。軋轢を乗り越え、平和の象徴、思想の自由の象徴として復元への気が遠くなるようなチャレンジが始まり、ドイツ統一後、ついに再建が果たされるシーンがなんとも感慨深い。(2014・8)

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