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June 12, 2014

吠えろ!坂巻記者

「お前は異動してきてから、原稿を一本も出してない。そういうやつに、飯を食いに行く資格はない」
 いくらなんでも、あんまりだ。でも、堀も空気が読めなすぎる。キャップがミーティングを始めると言っているのに、一人でご飯に行くだなんて。

「吠えろ!坂巻記者」仙川環著(ハルキ文庫)

医療ミステリーで知られる著者のお仕事エンタテインメント。職場ものといっても、主人公の中央新聞ヒラ記者、上原千穂は威勢よく啖呵を切るハンザワやハナサキとはちょっと違う。寝食忘れてバリバリ活躍するよりも、ワークライフ・バランスを望んでいる。念願かなって激務の社会部から異動してきた、人間らしく働けるはずの生活情報部なのに、パワハラまがいのキャップ、坂巻武士の下に就くはめになる。

なにしろ部下への指示は行き当たりばったり、上司にも取材先にも、暴言を吐きまくって敬遠されている。さらに後輩記者の堀は、社会人らしい気遣いは全くなく、やりたい仕事を優先しちゃう。しなやかで格好良く見える女性上司も、実は心に屈託を抱えている。

そもそも坂巻が率いるグループを新設したこと自体、なにやら社内政治のにおいがする。なんだかなあ、とため息をつきながらも、千穂はあえて上司に逆らうタイプではない。気が進まないまま、坂巻から振られたテーマをこなすうちに、一つひとつ成果に結びつく道筋を見いだしていく。働く人が大事にしたいこととは何か。
決して大上段にふりかぶらないし、軽く読めるけど、地に足がついたコメディだ。文庫書下ろし。(2014・6)

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