遺体
小泉は身元確認のメモに記された知った名前に気がつく度に、誰にも聞こえないほど小さな声でつぶやいた。
「君もか……」
「遺体 震災、津波の果てに」石井光太著(新潮社)
東日本大震災直後の釜石市の遺体安置所を描いて評判だったノンフィクションを、ようやく読むことができた。正直怖かったけれど、読んで良かった。
民生委員、市職員、住職、医師、歯科医、消防団員、自衛隊員や海上保安士…。さまざまな立場の人物へのインタビューを通して、むしろ淡々と、極限状態の日々を綴っていく。
涙は出ない。自らも被災し、親しい者の死に直面しながら、一人ひとりが眼前の事態に対処しようとしている。決して英雄でない市井の人々が、義務を果たす。圧倒的で容赦ない現実が胸に迫る。電子書籍で。(2014・6)
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