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December 07, 2013

感染源

「あの村は消えたんだと。人が来なくなったので、先月、様子を見に若い者をやったら、人っ子一人いなかったそうだ」

「感染源」仙川環著(PHP文芸文庫)

直美は日本を飛び出し、マレーシアで新薬の原料になる植物などを探索、日本の医薬品メーカーに提供する仕事をしている。ある日、後輩の研究員が発病。それは自分が提供した原料に触れたことが原因なのか?

著者お得意の医療ミステリー。舞台はほとんどマレーシア、しかも医薬品やサプリの原料探しという見慣れない設定が興味をひく。主人公の直美は、いわばフリーのコンサルタントだ。地元ガイドとたった2人、苛酷なジャングルに分け入り、民間療法が盛んな奥地の村へ、効果がありそうな植物などを分けて貰いに赴く。実際、なんとかエキスとか天然由来成分とかって、こういう風に集められているのかな。

取引していた村の消失や知人の死といったミステリーの背後に、直美の成長談もある。大学での研究者生活で目標を見失い、ふらりと訪れたマレーシアでビジネスを思いつく。その行動力はたいしたものだが、事件に巻き込まれたのをきっかけに、異国の地でひとり糧を得ていく覚悟とか、周囲の人物たちとの信頼関係の築き方を問われることになる。こういう決してスーパーウーマンではないけれど、凛とした女性を描くのが巧い。今回、医薬原料を巡って話が文明論に広がるあたりは、やや消化不良かな、とも思ったけれど。ウェブ連載の文庫化。(2013・11)

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