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December 30, 2013

2013年まとめ

うーん、遊び過ぎて、例年にも増して全然読めない1年でした。反省。
というわけで、数少ない中からのチョイスですが、マイベスト10は下記の通り。
2012年までの話題本ばかりになっちゃって、周回遅れの印象強し。ノンフィクションも全然無いし。なんてこった。

1、「路」吉田修一
2、「祈りの幕が下りる時」東野圭吾
3、「永遠の0(ゼロ)」百田尚樹
4、「解錠師」スティーヴ・ハミルトン
5、「ソロモンの偽証」宮部みゆき
6、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」村上春樹
7、「百年法」山田宗樹
8、「舟を編む」三浦しをん
9、「清須会議」三谷幸喜
10、「翔ぶ梅 濱次お役者双六三ます目」田牧大和

読みたい本は、ネット書店のウイッシュリストに積みあがってるんですよ。
2014年はなんとか話題に追いつきたいもんです…



December 08, 2013

祈りの幕が下りる時

 何かが靖代の頭に引っ掛かった。田島百合子が印象的な地名を口にしていたような気がする。やがて、その文字が浮かんできた。
「そうだ、日本橋……」

「祈りの幕が下りる時」東野圭吾著(講談社)

2013年ミステリーを代表する1作を、駆け込みで読んだ。感動必至の刑事加賀恭一郎シリーズ。10作目にしてついに、加賀はかつて自分をおいて失踪した母親の思いに迫ることになる。
いつもながら、ページを繰る手を止めさせない筆力はさすがだ。東野さんの名作「白夜行」を彷彿とさせる、哀しも壮絶な女の人生。380ページの長編だけど、大仰な表現は一切なく、丁寧な散文の積み重ねから、鮮やかにドラマが立ち上がる。

発端は小菅のアパートの一室で、40前後の女性が遺体で発見されたこと。さらに近くの新小岩の河川敷で、ひとりのホームレスが亡くなる。2つの事件の捜査線上に、ちょうど明治座で上演していた芝居の演出家、浅居博美が浮かぶ。博美は加賀の知り合いでもあった。博美の過去に、どんな秘密が潜んでいるのか、それは果たして加賀の過去とつながるのだろうか?

捜査のプロセスには、これまで博美とかかわった人物を中心に、数多くの証言者が登場する。多種多様な人生が交錯するので、筋運びはけっこう複雑だ。その過程で巧妙に読者をミスリードしておいて、大詰めで明かされる真相が衝撃となる。実に緻密なプロットです。
淡々とした筆致だけれど、道具立てには工夫が多い。たとえば謎解きのカギとして、加賀の本拠地・日本橋を中心とする橋めぐりのエピソードが出てくるのだけど、これがなんともいい江戸情緒だ。一方で、流浪の身である原発労働者の境遇に触れていて、鋭い社会性もはらむ。

登場人物のなかでとりわけ印象的なのは3人の女、博美、加賀の母、加賀の従兄・松宮脩平の母だろう。いずれも辛い思いを抱えながら、覚悟をきめて潔く生きる、名も無き女性だ。切ないなあ。
全体に重いトーンの物語のなかで、爽やかな存在感を放つ女性もいる。かつて加賀の父の看護にあたった金森登紀子だ。宿命の女性たちと、うまい対比になっている。加賀父子の真情をよく理解している役回りでもあり、これからのシリーズでも気になる人物になりそう。
肝心の加賀は、粘り強く真実を追い、鋭敏に人の心を感じとるという魅力的な造形が、一段とくっきりした印象だ。今作で日本橋周辺での活躍は一区切りとなる。松宮も着実に成長をみせた。この2人は阿部寛と溝端淳平のイメージがぴったりだなあ。映像化が楽しみかも。(2013・12)

December 07, 2013

感染源

「あの村は消えたんだと。人が来なくなったので、先月、様子を見に若い者をやったら、人っ子一人いなかったそうだ」

「感染源」仙川環著(PHP文芸文庫)

直美は日本を飛び出し、マレーシアで新薬の原料になる植物などを探索、日本の医薬品メーカーに提供する仕事をしている。ある日、後輩の研究員が発病。それは自分が提供した原料に触れたことが原因なのか?

著者お得意の医療ミステリー。舞台はほとんどマレーシア、しかも医薬品やサプリの原料探しという見慣れない設定が興味をひく。主人公の直美は、いわばフリーのコンサルタントだ。地元ガイドとたった2人、苛酷なジャングルに分け入り、民間療法が盛んな奥地の村へ、効果がありそうな植物などを分けて貰いに赴く。実際、なんとかエキスとか天然由来成分とかって、こういう風に集められているのかな。

取引していた村の消失や知人の死といったミステリーの背後に、直美の成長談もある。大学での研究者生活で目標を見失い、ふらりと訪れたマレーシアでビジネスを思いつく。その行動力はたいしたものだが、事件に巻き込まれたのをきっかけに、異国の地でひとり糧を得ていく覚悟とか、周囲の人物たちとの信頼関係の築き方を問われることになる。こういう決してスーパーウーマンではないけれど、凛とした女性を描くのが巧い。今回、医薬原料を巡って話が文明論に広がるあたりは、やや消化不良かな、とも思ったけれど。ウェブ連載の文庫化。(2013・11)

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