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January 27, 2013

永遠の0(ゼロ)

 私は想像してみました。ある昼下がり、縁側に座っている私、そこに孫が来て、おじいちゃん、何か話をしてってせがむ。そしてそんな孫に向かって「おじいちゃんは、昔、南の島で戦争をしていたんだよ……」と語る自分を--。
「平和な国になっていたらいいですね」
 思わず呟いた自分の言葉に驚きました。まるで自分の口から出た言葉とは思えませんでした。命を賭けて戦う戦闘機乗りが、ましてこの戦争で死ぬ覚悟で戦っている自分が、そんなことを言うとは。
 宮部上飛曹は何も言わずに、深く頷きました。

「永遠の0(ゼロ)」百田尚樹著(講談社文庫) ISBN: 9784062764131

終戦から60年。目的を見失ってぶらぶらしている26歳の健太郎は、ふとしたことから太平洋戦争の特攻で死んだ祖父・宮部久蔵について調べ始める。最期の日々を知る戦友を訪ね歩くうち明らかになっていく、戦争というもの、祖父の人物像と秘めた思い、そして驚愕の真実。

文庫で570ページを超える大部だが、ほとんど一気に読んだ。児玉清さんが絶賛したというのも頷ける。零戦の息詰まる空中戦の描写は手に汗握るし、当時の優れた技術力や真珠湾、ガダルカナルなどの経緯の説明も丁寧。著者はなぜ作戦とも呼べない無謀な特攻が実行されたのか、を探り、優秀なはずの海軍のリーダーたちの官僚性に迫っていく。もちろん多くのフィクションをまじえているのだろうが、相当な情報量が詰め込まれていて、全編にみなぎる並々ならない情熱に、まず舌を巻いた。

だが、もちろん物語の核は宮部久蔵という人物の魅力だ。健太郎が調べてみると久蔵は才能と努力によって、パイロットとして卓越した技量を獲得しながら、「生きて帰る」ことに徹底して執着し、到底軍人らしからぬ臆病者として、周囲に強い違和感を与えていた。当時としては忌み嫌われるような信念を隠さなかった訳はいったい何だったのか、さらには、それほどの信念を公言しながらなぜ、特攻として逝ったのか。一級のミステリーといえる謎解きの後に、人が本当に守るべきものの存在が鮮やかに浮かび上がって、感動が押し寄せる。過去と現在が響き合う、とても著者デビュー作とは思えない力業。

健太郎に戦争を語り聞かせる男たちは、もう高齢だ。上場企業のトップまでつとめた人物も、ヤクザ者もいる。境遇は違えど、それぞれ胸に辛い記憶を秘めて戦後を生き抜き、それでも相手がほかならない久蔵の孫ならばと、重い口を開く。小説の設定から、さらに時は流れてしまった。すぐそこにある歴史を知ることの意味を、考えさせられる。

余談だけど、2013年末公開予定の映画化で宮部を演じるのは岡田准一。厳しい現場で丁寧な言葉遣いをする、というところが「SP」のイメージで、合ってるかも。(2013・1)

January 15, 2013

残念な日々

ぼくのしぼんで小さくなった白髪の天使はソファに座り、マレーネ・ディートリッヒの〈ジョニー(もし貴方の誕生日だったら)〉をいっしょに口ずさんでいた。口ずさむだけだったのは、歌うとぼくに悲しみを見破られてしまうからだ。物語が祖母の人生の収穫だった。

「残念な日々」ディミトリ・フェルフルスト著(新潮クレスト・ブックス) ISBN: 9784105900946

ベルギー・フランダースの俊英による連作短篇集。自伝的、ということで単なる思い出のエピソードではなく、作家自らの原型である家族のかたちが詰まっている感じがして、可笑しくも切ない物語だ。

母が家を出たため、幼いディミトリー少年は父と一緒に片田舎の祖母の家に転がり込む。狭い家にはご同様の事情を抱えた叔父が3人も同居していた。揃いも揃ってぐうたらで下品で、酒とギャンブル、女に弱く、酔った挙句の喧嘩や警察沙汰も絶えない兄弟たち。主人公は長じて作家になり、そんな家族と距離を置くようになった。けれど行間には読む者の胸を締め付けるような、愛情としか呼べない思いが流れている。

訳者長山さき氏のあとがきによると、フランダースの刑務所では聖書の次に本書がよく読まれているのだとか。それからもう1点、村の方言を「関西地方の方言を控えめに用い」て表現した、とある。どうりで読んでいてずうっと、「じゃりン子チエ」のイメージがちらついていたわけだ。いい感じである。(2013・1)

January 06, 2013

2012年まとめ

一応、2012年の読書を回顧。といってもベストをあげるほど読んでいないので、単なる「面白本まとめ」ということで、フィクション5冊は、

「卵をめぐる祖父の戦争」デイヴィッド・ベニオフ
「64」横山秀夫

「シャンタラム」(上)(中)(下)グレゴリー・デイヴィット・ロバーツ

「太陽は動かない」吉田修一

「共喰い」田中慎弥
 

ノンフィクション5冊は、

「パブリック」ジェフ・ジャービス
「FBI美術捜査官」ロバート・K.ウィットマン、ジョン・シフマン

「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子

「浄瑠璃を読もう」橋本治

「ルネサンスとは何であったのか」塩野七生

以上です。うわあ、本当に寂しいなあ。個人的にはiPadとiPadミニを相次ぎ導入して、電子書籍を読み始めたのがニュースでしたね。さすがに2013年はもうちょっと読みたいです。

 

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