ウェブはグループで進化する
いまや誰が誰とつながっているのか、誰と会話しているのか、誰とアイデアを共有しているのかをかなり正確に把握することが可能だ。
「ウェブはグループで進化する」ポール・アダムス著(日経BP社) ISBN: 9784822249113
グーグルからフェイスブックに転進した、はやりの「ユーザーエクスペリエンス・デザイン」の専門家が、ウェブマーケティングの手法を解説する。オンラインはオフラインの日常に近づいている、つまり何か新しいボーダーレスな体験ではなく、リアルな知人とのごく普通の雑談の場だ、と著者はいう。最近の「LINE」の興隆などをみると、とても現実的な指摘だ。ちょっと夢がないくらいに。人と人の繋がり方や意思決定プロセスの分析も、ごく常識的なものだ。
販売促進で、たったひとりで多くの人を動かしちゃう、いかにもウェブらしい「インフルエンサー」を利用しようとする戦略は、実は効率が悪い、というのが著者の主張だ。かわりに、規模が小さくてリアルな、ごく普通の人間関係をウェブの膨大なデータから抽出し、その関係に乗っかって情報を伝達していく手法を勧める。一人ひとりから、きちんと情報伝達のパーミッションをとることも重要だ。
こんな手法を可能にしたのが、フェイスブックということだろう。原著は2011年11月の出版だから、同社はメンローパークに移転する直前、世界の注目を集めて最も勢いのあるころか。ウェブの歴史の一断面を感じさせる。小林啓倫訳。(2012・10)
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