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September 02, 2012

無菌病棟より愛をこめて

黙々とそれを食べているうちに、どうしようもなく泣けてきた。顔を伏せて気づかれないようにしていたつもりだったが、バレバレだったらしい。
「泣きながら食べてる」
夫がぼそりと言い、父も言った。
「泣きながら、全部食っとる」

「無菌病棟より愛をこめて」加納朋子著(文藝春秋) ISBN: 9784163750309

2010年6月、「ななつのこ」の作家は43歳で、急性骨髄性白血病と診断される。それから約8カ月の闘病記。

本好きブロガーさんたちの間で話題だった本を読む。「七人の敵がいる」を楽しく読んでいたので、発刊直後に著者がこのような大病をしていたということが、まず衝撃だ。なにより淡々と綴られている化学療法、骨髄移植のシビアさがなんとも壮絶で、読むだけで辛くなる。

しかし著者の姿勢はあくまで前向きだ。病状や治療の辛さだけでなく、少しでも体力を維持しようと、病棟の廊下でせっせと体操したり、ひとりの時間に好きなアニメやコミックを楽しんだり、という患者生活の日常にも紙幅を割いている。ユーモアを忘れず、夫(作家の貫井徳郎氏)やきょうだい、友人、医療スタッフに対する感謝の言葉を繰り返す。

心の中には暗い不信や不満もたくさん渦巻いたのではないか、と想像するのだけれど、著者がこの本を世に出したのは、そんなことを訴えたかったわけではないのだろう。同じような厳しい状況にいる患者とその家族に向けた、「どうか絶望しないで」というメッセージが胸を打つ。(2012・8)

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