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August 26, 2012

ルネサンスとは何であったのか

ルネサンス時代とは、要するに、見たい知りたいわかりたい、と望んだ人間が、それ以前の時代に比べれば爆発的としてもよいくらいに輩出した時代なのですよ。

「ルネサンスとは何であったのか」塩野七生著(新潮文庫) ISBN: 9784101181318 

2001年の「ルネサンス著作集」に合わせて刊行された論考。フィレンツェ、ローマ、ヴェネツィアを逍遥しつつ、架空の対話形式でルネサンス精神を解説する。

この夏の旅に合わせ、私的イタリアシリーズの1冊目を楽しく読む。巻末の三浦雅士との対談でも触れられているように、塩野作品の魅力は、豊かな想像力で歴史上の人物に肉薄し、生き生きと描きだすことだろう。ルネサンスと言えばダ・ヴィンチやミケランジェロが思い浮かぶが、本作では作家独特の視点で、聖フランチェスコからシェークスピアまでの「ルネサンス人」を選び、年表と略歴一覧を加えて立体的に紹介している。生身の人間から歴史を組み立てていく発想の原点を知る思いだ。

イタリアが持つ強靱な現実主義にも言及していて、興味深い。フィレンツェでは金融、ヴェネツィアでは世界貿易という経済や経営の視点が、社会、国家のありようにつながっていたこと。また中世の権威そのものであるローマカトリックの歴代法王たちが、どのように新しい波であるルネサンスの巨匠たちと接していったか、ということ。文庫を開くことで時空を旅する贅沢。(2012・8)

人体工場

論から言うと、フェニメディックスなんて会社は存在しないわね。治験関連の業界団体や、治験に協力している東京の病院なんかを、片っ端から当たってみたけれど、そんな会社、誰も知らないって。

「人体工場」仙川環著(PHP文芸文庫) ISBN: 978456967568

大学生の真柴徹は軽い気持ちで、割の良い治験のアルバイトを引き受けた結果、思いがけない事件に巻き込まれていく。

著者お得意の医療ミステリー。科学技術の知識に、人の体を使って人を助ける、という今日的な倫理問題を絡めていて考えさせる。

主人公の真柴は特段の人生の目標ももたず、麻雀と居酒屋のバイトでだらだらと時間を浪費している若者だ。つまりは、どこにでもいそうな青年であり、いかにも不甲斐ない。しかし危機に直面したことで成長し、治験で知り合った美紀を救おうと決意。ブツブツぼやきながらも悪に対峙していく姿は、思わず応援したくなる。

徹底して「上から目線」の女医・若松みなみや、口は悪いものの実は真柴を可愛がっているらしい居酒屋店長・飯塚といった、脇役の造形が魅力的。真柴が敵陣に乗り込んでからの展開は、もう少しテンポアップしてもいいかな。(2012・7)

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