「だから演劇は面白い!」
仕事とは、与えられた状況のなかで、その人自身が何を仕事ととらえ、仕事として呼び込むか、だと思うのです。これはお金のことだから会計担当の○○さんの仕事、これはPRのことだから広報担当の××さんの仕事、と勝手に線引きせず、いかにそのはざまからも仕事を探し出して、自分から手を出し、拾い出し、仕事にさせるか。
「だから演劇は面白い!」北村明子著(小学館101新書) ISBN: 9784098250509
敏腕演劇プロデューサーが、舞台制作と俳優マネジメントにまつわる信条、仕事術を語り下ろす。
著者は女優をへて1985年から野田秀樹率いる夢の遊眠社の営業担当、「NODA・MAP」のプロデューサーを歴任したヒットメイカーだ。シス・カンパニー社長として舞台制作のほか、堤真一、段田安則ら実力派俳優を抱えてもいる。興行は水もの、どんぶり勘定が通り相場の演劇界で、いかに黒字を維持しているか。180ページ弱の薄い新書だが、自信たっぷりの語り口が心地良い。
自意識が強い作家や役者とわたり合い、チラシひとつまで工夫をこらして確実にチケットをさばき、稽古から打ち上げまで立ち会って心配りを欠かさない。いかにも大変な仕事だけれど、トラブルこそやる気の源、と言い切るエネルギーが頼もしい。要は好きな舞台を実現し続けるには、収支を合わせなければいけない、という信念なのだろう。
女性スタッフが多いので、社名のシスはシスターからとったと思われがちだが、実はIT用語のSIS、つまり戦略情報システムからとったという逸話が意外。情報の大切さを、あえて無機的に表現したのだそうだ。(2012・6)
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