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June 05, 2012

「深読みシェイクスピア」

芝居の稽古場は発見の場でもある。俳優たちにとってばかりでなく、翻訳者にとってもそうなのだ。彼らの疑問質問に答えているうちに、書斎での作業では気づかなかったことに目を開かれる。

「深読みシェイクスピア」松岡和子著(新潮社) ISBN: 9784106036729

シェイクスピア個人全訳に取り組んだ翻訳家が、手練れの編集者・小森収を聞き手に、生きた舞台における言葉の魅力を語り下ろす。

著者は英米の劇団を羨ましいという。シェイクスピアを英語でそのまま上演でき、翻訳に悩まなくて済むから。けれど、苦労して翻訳するからこそ発見できることもある。
たとえば「ハムレット」。オフィーリアがハムレットを相手に、自分のことを「品位を尊ぶ者」と語るくだりがある。いくら貴族の娘とはいえ、この言葉遣いはちょっと気位が高すぎないか。そんな疑問を解いたのは、蜷川幸雄演出の舞台でオフィーリアを演じた女優・松たか子だという。「私、それ、親に言わされていると思ってやってます」! 松たか子だからこその見事な解釈に、翻訳者ははたと手を打ち、再度全編の訳文を見直すのだ。

ほかにもジュリエットがロミオを呼ぶときの言い方が表すものとか、マクベス夫妻に亀裂が生じた一瞬はいつかとか、様々な解釈の軌跡が満載。演劇の言葉がもつ豊かさ、立体感を味わえる一冊だ。電子書籍で読了。(2012・6)

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