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October 01, 2011

「弁護側の証人」

金網のあいだから夫はわたしの手をさぐりあて、指先をそっとにぎった。

「弁護側の証人」小泉喜美子著(集英社文庫) ISBN: 9784087464290

ダンサーの漣子は八島財閥の道楽息子・杉彦に見初められて結婚。しかし同居し始めた豪邸で、義父が何者かに殺されてしまう。

1985年に事故死した著者の、1963年のデビュー作。2009年に復刊された文庫を読んだ。叙述ミステリの古典的名作といわれるだけあって、気持ちよく騙されて爽快。

身分違いの結婚、屋敷に集まった親族や使用人の閉じた人間関係など、舞台装置はさすがに古めかしい。しかしどんでん返しを理解してみれば、漣子や「弁護側の証人」の心情には、決して時代遅れといえないドラマがあることがわかる。ほろ苦い幕切れも心地よい。

生島治郎、内藤陳との結婚、破局、「女には向かない職業」「時の娘」の翻訳…。道尾秀介さんが解説で触れているように、著者自身の人生もドラマティックだなあ。(2011・9)

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