「RURIKO」
私の見る目に間違いはありません。信子ちゃんは近い将来、とてつもない美女になるはずです。そうしたらぜひ女優にしてください。
「RURIKO」林真理子著(角川文庫) ISBN: 9784041579435
わずか4歳のとき、満州の地であの甘粕正彦に「将来、女優になるべきだ」と言わしめた女性。天性のスター、浅丘ルリ子の評伝。
知人に勧められて一気に読んだ。フィクションという断りはあるけれど、登場人物はほとんど実名、しかもとびきり華やかで、読んでいて楽しい。
ストーリーの大半を占めるルリ子さんの恋愛遍歴を、石原裕次郎、美空ひばりという、文字通り昭和を代表するスターが彩る。1960年前後の日活アクション映画が、どれほど熱気にあふれていたか。当時の日本人は彼らの格好良さ、きらめく才能に拍手喝采した。
ルリ子さんは日本人離れした美貌をもち、スクリーンで独特の存在感を発揮、やがてテレビや舞台にも進出する。けれど、財産にも男にも執着しないし、とくだん教養を身につけようとしない、そのことを隠しもしない女性として描かれている。
ライフスタイルに付加価値をつけて、自分を大きく見せようという気がないようだ。ただ前を向いて生きるからこそ幸福だという、このへんの潔さが気持ちいい。終盤に至って彼女の人生観が、冒頭の満州の夢と響きあう構成も印象的だ。素材と書き手との、幸福な組み合わせ。(2011・8)
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