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May 22, 2011

ねにもつタイプ

あなたがなんとなく人生というものにしっくりこない感じを抱いているとすれば、それはおそらくあなたが「気がつかない星人」だからなのだ。

「ねにもつタイプ」岸本佐和子著(ちくま文庫) ISBN: 9784480426734

人気翻訳家の雑誌連載エッセイ。帯の「微妙に増量して文庫化」という控えめな売り文句がチャーミングだ。

エッセイというよりファンタジーの味わい。実は本業の翻訳のほうをまだ読んだことがないのだけれど、著者のイマジネーション、ショートショートとしての完成度を味わえる。

1編を文章3ページ、クラフト・エヴィング商會の洒落たイラスト1ページで構成。限られた字数のなかで、妄想が膨らむさまはあきれるほどだ。謎のフレーズ「ホッホグルグル」が、いったん頭に浮かぶとどんどん増殖しちゃうとか、図書館の分類カードで見つけた炭焼き専門書の著者「岸本Q助」氏はきっと炭焼き一筋、驚くほど高潔に暮らしているに違いない、とか。なかには結構ダークな展開もあるんだけど、ラスト1行でぱちっと弾けて、現実に引き戻される。そのリズムが心地良い。

全編に漂うのは著者が日常生活で覚える、ささいな違和感。たとえば会社勤めをしていて、上司に「よしなに」と指示されても、何をどう「よしなに」していいのかわからない。誰かを非難したり、文句をいう気はないのだ。ただ少しだけ、世間に馴染みきれずに、ぼおっとしている姿が目に浮かんで、くすっと笑いを誘う。(2011・3)

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