スローターハウス5
わたしは知的生命の存在する三十一の惑星を訪れ、その他百以上の惑星に関する報告書を読んできた。しかしそのなかで、自由意志といったものが語られる世界は、地球だけだったよ
「スローターハウス5」カート・ヴォネガット・ジュニア著(ハヤカワ文庫) ISBN: 9784150103026
第二次大戦末期の1945年2月、米兵捕虜としてドイツ東部で「ドレスデン爆撃」を経験したビリー・ビルグリムの人生。
半自伝的といわれる、あまりにも有名なSFを手にとってみた。280ページと、意外にさほど長くない。けれど、ストーリーはとても要約しづらい。
戦後、検眼医として穏やかに暮らしているビリーが、何故だか時間旅行者となって、過去と未来を行ったり来たり。はたまた空飛ぶ円盤で、科学技術が高度に発達した「トラルファマドール星」に連れ去られたり。まるでおもちゃ箱をひっくり返したようなはちゃめちゃさだ。全編が、ビリーが1986年にシカゴで撃たれる瞬間、頭を駆けめぐる脈絡のない回想、もしくは妄想のようにもみえる。
気の良い一アメリカ人の、どこか軽薄で、整理されていない人生。1969年にこの小説が出版されたとき、まだドレスデン爆撃は広く世に知られていなかったという。そう考えると、あまりにも衝撃的な体験と人間存在の不条理は理屈抜きに、そんなビリーの人生に託すしかなかったのかも、と思えてきた。
登場するトラルファマドール星人は宇宙を理解し、過去も未来も見通しているという。なんとも虚無的な世界観が印象的だ。伊藤典夫訳。
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