叫びと祈り
牢屋の外から写真を撮られたら、どんな気分になる? 不快だろ。つまりそれと同じだよ
「叫びと祈り」梓崎優著(東京創元社) ISBN: 9784488017590
国際情勢を分析する専門誌の若手ライターで、語学に堪能な斉木が、世界各地への取材旅行で遭遇する事件。第五回ミステリーズ!新人賞の短編「砂漠を走る船の道」を含む連作短編集。
話題の作家のデビュー作だ。まだ20代。アフリカの砂漠地帯、風車が立つスペインの白い街、秋深まる南ロシアの修道院……と、紀行番組を観るような架空の舞台の雰囲気に味わいがある。
斉木は旅をしながら、様々な異文化を取材してまわる。だから連作をつないでいく通奏低音は、価値観の異なる人と人が理解しあうこと、通じ合うことの難しさだ。
ミステリーとしては本格。個人的にあまり本格に慣れていないせいか、正直、あまり滑らかな展開ではないなあ、と感じるところもあったけれど、各編を結ぶテーマが巻末に至ってはっきりと形をなし、清々しさを残す感じは巧い。(2010・12)
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