ドキュメントひきこもり
一旦、社会からリタイヤしてしまうと、なかなか社会復帰ができないまま、密かに地域で息を潜めている実態が浮かび上がってきたのだ。
「ドキュメントひきこもり」池上正樹著(宝島新書)
ISBN: 9784796677882
1997年からひきこもりの実態を追いかけているというジャーナリストが、当事者、家族、医師や支援者の声を通じて最新事情を綴る。
08年の東京都のサンプル調査で、「ひきこもり」状態の人は都内で2万5000人、予備軍は約20万人、また厚生労働省の調査では、ひきこもりの人がいる家庭は全国で約26万世帯と推計されている。
かつてひきこもりというと、中高校生が不登校の延長線上で、自宅の個室に閉じこもって一歩も出てこない、というイメージがあった。青春の痛みというか、子供に個室を与えているごく普通の家庭で起きる、何やら理解しづらい事態、という印象もあったと思う。
しかし最近は「高年齢化」や、7年以上といった「長期化」の傾向が強まっているという。一度は社会にでて働いた経験がある人、近所のコンビニに出かけたりはできるのに、求職活動をしようとすると体が動かない人、といった例が少なくないらしい。そういう雇用環境が引き金になっているようなケースまで、ひきこもりと括ってしまうのが適切なのか、という気がしてくる。
当事者が高齢化するということは、親は年金生活者だったりするわけだ。その閉塞感は想像にあまりある。著者は医療的、経済的支援の必要性を指摘している。(2010・11)
« マルガリータ | Main | 「ラスト・チャイルド」 »
Comments