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October 11, 2010

「七人の敵がいる」

「……ねえ、ミス・ブルドーザー。君は相変わらず、あらゆるものをなぎ倒して前に突き進んでいるかい?」
「だから、ミセス」ですってばと、続けようとしてふと気が変わった。「……はいはい、ブルドーザー母ちゃんになって、日々驀進していますよ」

「七人の敵がいる」加納朋子著(集英社) ISBN: 9784087713565

出版社に勤める主人公の山田陽子が、一人息子の小学校在学中、子育てを巡って様々な「敵」に遭遇する奮闘記。

人気作「ななつのこ」の作家が書いたPTA小説、ということで、興味をひかれて読んだ。多忙なワーキングマザーがPTA、学童保育、自治会、スポーツ少年団などに関わって、様々な不合理、非効率を感じ、立ち向かっていくさまを、コメディタッチで描いている。
著者自身、一児の母とか。多分にデフォルメされているけれど、ワーキングマザーと専業主婦との感覚のずれや、夫、姑、小姑との行き違いなどは、結構リアルなところもありそう。普通の親でいることも、きょうび、そうそう楽じゃあない。

読み始めた当初は、陽子のトラブルメイカーぶりにちょっとあきれた。なにしろ全く場の空気を読まず、目の前にいる相手を容赦なく論破してことごとく敵に回してしまうのだ。しかし、その性格のせいで職場でも「ブルドーザー」などと揶揄され、決して得はしていない。しかもその損な性格を十分自覚していると語られるにつれ、なんだか可愛らしく思えてきた。

いったん疑問に思うと黙っていられない、だから上手に立ち回れない。けれど立場の違う親たちの事情をだんだんに理解して、自分なりになんとか解決策を探ろうと努力していく。子を思う気持ちは、誰しも同じなのだから。

陽子が敵を攻略するさまは痛快。もちろん「そんなにうまくいくわけないだろ」とツッコミたい展開だけれど、往年の名作ホームドラマ「ダブル・キッチン」(1993、TBS)のような明るい味わいだ。健気な息子・陽介や、陽子の面倒な性格を面白がって辛辣に論評するママ友・遙ら、脇をかためる登場人物もなかなか魅力的。(2010・10)

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