「おへそはなぜ一生消えないか」
体細胞は、「その個体に限り」という制限があるが故に多少の変異が許容されつつ、不等複製されて多様化した存在なのである。
「おへそはなぜ一生消えないか」武村政春著(新潮新書) ISBN: 9784106103520
食べる口としゃべる口はなぜ別ではないのか、年をとるとなぜ傷が治りにくくなるのか? 素朴な疑問を入り口にして、分子生物学者が人体の不思議を読み解く。
発生や老化といった現象は馴染み深いものだけれど、その仕組みを説明しろと言われたら、たいていの人はできない。本書ではそのあたりを、人体は「複製」によって形作られる、という観点から解説していく。
ジョークや例え話を豊富に散りばめていて、語り口は軽快だ。とはいえ新書サイズという制約のせいか、素人にはちょっと理解しきれないところもあって、個人的には、みるみる謎が解ける、という感じには到達しなかった。それだけ人体の謎は深遠、ということなのかも。(2010・9)
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