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August 07, 2010

「日本魅録」

彼がキャメラマンに切り取らせたのは、時間ではなく「空間」だった。「時間」は切り取らずに丸ごと俳優に預けてくれた。

「日本魅録」香川照之著(キネマ旬報社)  ISBN: 9784873762784

1965年生まれの俳優・香川照之による雑誌連載の単行本化。2003年初めから2005年春まで、話題としては「利家とまつ」から「救命病棟24時」までを収録している。

実によく働いている実力俳優だけあって、アジアを含む幅広い映画、ドラマの現場が次々と登場。崔洋一、伊勢谷友介、吉永小百合、長瀬智也……。著者はとにかく一緒に働いた監督、俳優がいかに素晴らしいか、言葉をつくして誉めまくる。読み始めてからしばらくは、これって撮影秘話というより仕事のラブコールかしらん、と感じていた。

だがほどなく、著者が自己分析を吐露し始めたあたりから、おもむきが違ってきた。理屈っぽくて、ちょっと面倒くさそうな性格はどんな風に作られてきたか。また、観客には天職にしかみえない俳優という仕事に対して抱いている、何やら屈折した思い。つまりは演じるということはいったい何なのか、著者は巡り会うあらゆる作り手、演じ手に心の中で問い続け、探り続けているのだ。

豊富に織り込まれた撮影現場や授賞式などでの写真、「ゆれる」で共演したオダギリ・ジョーとの対談も楽しい。巻末に人名索引付き。(2010・7)

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