「古本道場」
店内は少し薄暗くて、古びた本がひっそりと、音を吸収するように壁を作っていて、時間が不思議と沈殿している。開け放たれた戸の向こうに、一定速度で進むまばゆい現実がある。
「古本道場」角田光代・岡崎武志著(ポプラ社) ISBN: 9784591086278
神保町、青山、西荻窪。古本に造詣が深いフリーライターに指南されて、人気作家が体験する古書店探訪記。
2004~2005年のウエブマガジンでの連載をまとめた単行本。ほかの読書の合間合間に、ちょっとずつ読んできた。カバーにかかった赤い帯の、「新直木賞作家」の惹句が少し懐かしい感じで目をひく。
角田さんは岡崎氏が課すお題にそって、しかし実際にはほとんど自分の興味がおもむくままに本を購入。その過程で町によって、あるいは店によって似たジャンルの本でもけっこう値段が違うことを発見している。出久根達郎さんの著作「作家の値段」でも感じたことだけれど、古本をめぐってはこういう、様々な価値観がないまぜとなった値段の話がとても面白い。
それから店に色濃く漂う、それぞれの土地柄のことを語る。神保町はちょっと近寄りがたく、青山はお洒落という具合。そのなかでも特に西荻の、サブカルチャーと田舎の雰囲気の微妙な融合という表現が、言い得て妙です。古書ってきっと、町の空気、行き交う人の空気を呼吸している生き物なのだなあ。(2010・6)
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COCO2さん☆おはようございます
古本屋さんって一軒ごとに個性的で楽しいですねぇ。
今時のおしゃれな古書店もいいけれど、ちょっと怖いオヤジがいそうなお店も魅力的です(#^.^#)
Posted by: Roko | June 26, 2010 09:04 AM
Rokoさん、コメント有り難うございます。こういう本を読むと古書店めぐりって、時間と知的素養をもつ人の贅沢な趣味だなあ、と思っちゃいます。私にとっては憧れですね~
Posted by: COCO2 | June 26, 2010 04:19 PM