« 「フォークの歯はなぜ四本になったか」 | Main | 「ロード&ゴー」 »

June 09, 2010

「川は静かに流れ」

死と血は少年が大人になるために避けては通れない要素なのだ。

「川は静かに流れ」ジョン・ハート著(ハヤカワ文庫) ISBN: 9784151767029

青年アダム・チェイスはかつて殺人の容疑をかけられ、無罪となったものの周囲の目に深く傷ついて故郷を後にした。親友からの電話で5年ぶりに舞い戻った矢先、再びある事件に巻き込まれる。

2009年の各種ミステリベスト10に数多く選ばれた話題作を読む。淡々とした筆致ながら、色鮮やかな思い出のシーンと、対照的になんとも重苦しい現在とが交差する構成は見事。なんだかクリント・イーストウッドの映画を観ているような、ちょっとロス・マクドナルドのような。第2作にして、早くも巨匠の風格だ。

舞台はノース・カロライナ州の農場地帯。行ったことはないんだけれど、行間からはどこか蒸し暑くて、保守的らしい空気がたちのぼる。
そこで主人公が直面するのは、家族の問題だ。一度は自分を拒絶した父と継母、愛そうとしても互いに態度がぎこちなくなってしまう義理の弟妹、そして幼い記憶に刻み込まれた美しい実母の最期。やがてミステリとともに明らかになっていく彼らの真実。

血縁であろうとなかろうと、家族という存在からは、誰しも逃れようとして逃れられない。細部の描写に、普遍性が宿る。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞。東野さやか訳。(2010・5)

« 「フォークの歯はなぜ四本になったか」 | Main | 「ロード&ゴー」 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「川は静かに流れ」:

« 「フォークの歯はなぜ四本になったか」 | Main | 「ロード&ゴー」 »