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May 14, 2010

「ハナシがちがう!」

「星祭竜二ゆうたな。一杯いこか」
 梅寿はコップ酒を差しだした。
「え……? あの……俺、未成年で……」
「アホか。おまえは噺家になったんやで。囃家ゆうのは治外法権じゃ。師弟のかための盃や。ぐっといけ」

「ハナシがちがう!」田中啓文著(集英社文庫) ISBN: 9784087460742

「金髪とさか」という派手なヘアスタイルの竜二。バンドで有名になるはずが、なぜか強制的に上方落語の大御所、笑酔亭梅寿に弟子入りさせられて…

身辺で起こる事件の謎を、駆け出し噺家の竜二が解き明かしていく落語ミステリ。…ということだが、読み始めた感じはまるっきりギャグマンガだ。とにかく師匠の梅寿が無茶をしまくる。年がら年中酔っぱらってるわ、弟子とみれば暴力をふるうわ、お下劣だわ。でも、噺はすごいらしい。

ドタバタのなかにも「時うどん」「住吉駕籠」など、上方落語の粗筋を織り交ぜてあり、著者は相当な落語好き。そして登場人物たちが示す人情、芸への情熱が心地よい。「笑酔亭の捨て育ち」とまで呼ばれている、ほったらかしの憂き目に遭いながらも、着実に落語家として腕を上げていく竜二を思わず応援したくなる。宮藤官九郎脚本のドラマ「タイガー&ドラゴン」(TBS、2005年)の原型をみる気分だ。(2010・5)

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