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February 07, 2010

「眼の奥の森」

風はないのに陽に照らされた雑草と二本のタンカンの木が揺れているのは、久子の目に滲むもののせいだった。

「眼の奥の森」目取真俊著(影書房) ISBN: 9784877143930

太平洋戦争末期、沖縄の小さな島で事件は起こった。60年あまりの時をこえ、人々の心をしめつける記憶。

力のある物語だ。米兵に向かっていった少年や村の人々、日系人の通訳ら、次々に語り手を変えながら記憶をたどる連作。ときに耳慣れない島の言葉をまじえて語られるそれぞれのエピソードは、悲惨なシーンを読む者にまざまざと想起させ、暗い熱気をはらんで息苦しいほど。だけど、決して目をそらさせはしない。

加害者、そして傍観者に向けられる著者の怒りは激しく、深い。それと同時に、いったい誰が加害者であり、傍観者なのか、と問い続ける、強靱で重層的な想像力を備えていて、いやおうなく読者にも思考を迫る。読み心地はあまりなめらかではないと思うのだけれど、小説というものの力を感じさせる。(2010・2)

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