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February 13, 2010

「カイシャデイズ」

「隈元に同じことを言われた。だけど、この歳になって新しいことなんてもう思いつかないよ。どうしたらいい? トキちゃん」
「もう一度」水木の顔を見ず、もうすぐホームに入ってこようとする、総武線の黄色い車体へ、大屋は視線を向けた。「莫迦になればいいと思います」

「カイシャデイズ」山本幸久著(文藝春秋) ISBN: 9784163268507

東京・東中野にある社員47人の内装会社、ココスペース。そこで繰り広げられる、ささやかな働く人々の日常。

ほろ苦くて、軽やかな群像劇だ。才能はあるけど身勝手なデザイナー、元DJでやる気がない若手営業マン、庶務一筋の怖そうなベテラン女性…。往年のお仕事ドラマ「ショムニ」や「ハケンの品格」みたいな、スカッとする展開はない。けれど登場人物それぞれが、それぞれのやり方で同僚や取引先と向き合い、自らの仕事に向き合おうとする姿に、著者は温かい目を向けている。

なかでもキャバクラ好きの営業チーフが魅力的だ。部下が会社に来なくなっちゃっても説教ひとつするでなし。しかし、いざ何かを実現しようと思えば顧客のビルの壁だってぶち抜いちゃう。肩肘張らず、卑屈にもならずに、飄々と「仕事を生きる」。それは「真面目に働く」といったこととは、ちょっとニュアンスが違う。どこか稚気がある。
稚気といえば、社長以下ココスペース社員たちのいちいち楽しい言動には、いくつになっても大人になりきれない感じが漂っている。たびたび登場する輪ゴム鉄砲を飛ばしていたずらする姿が、その印象を象徴しているようだ。著者自らの経験に裏打ちされているからか、経費の処理とか売り掛けの回収といった、お仕事の細部もリアル。(2010・2)

カイシャデイズ 山本幸久 粋な提案

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Comments

こんにちは。
山本幸久さんのお仕事小説は
面白くて元気が出ますね。
どの登場人物も「あるある~」と思ってしまいます。
「カイシャデイズ」はたしか「凸凹デイズ」と
ちょっぴりリンクしていたような記憶が。

>木曽のあばら屋さん
コメント有り難うございます。山本幸久さん、初読みでしたが、軽やかでした~。凸凹デイズも要チェックですね。

次は本屋大賞に向けて、天地明察かなぁ。

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