「戦後世界経済史」
質に関する劣悪な情報を背景とする市場取引が早晩崩壊することは、経済理論の教えるところであった。正義や正直といった徳が、実は市場そのものの存立の大前提であったことをわれわれは再認識させられたのである。しかしこれは、一部の関係者の「貪欲さ」を非難すれば済むという問題ではない。
「戦後世界経済史」猪木武徳著(中公新書) ISBN: 9784121020000
第2次大戦からの復興、アジア諸国の台頭、社会主義経済の帰結、そしてバブル崩壊など資本主義経済の迷走を、「市場」の視点から概観する。
欧州、米国、アジア、アフリカと、著者は世界中を飛び回りながらテンポ良く約60年の歴史を駆け抜けていく。素養が足りないので、350ページを超える内容をちゃんと消化できた、とはもちろん思わない。しかし読み進むうち、おおまかにせよ世界経済の流れが頭の中で整理されていく感じが心地よい。
ビジネスに携わる人々が、時々刻々の変化と不確実性を捉える上で、価格こそが大きな役割を果たす。そういう「市場」に対する著者の基本的な評価は揺るぎない。その上で市場の失敗にも言及。経済が揺らいだときに、単に特定のプレイヤーの振る舞いを糾弾するのではなく、揺らぎを防ぐ「システム」の進化に衆知を集めるべきだ、と指摘する。なんだかポジティブ。名画「ローマの休日」とマーシャル・プランの関係など、ミニ知識で楽しませる工夫も散りばめられている。(2010・2)
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