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January 16, 2010

単純な脳、複雑な「私」

脳は顔に敏感なんです。ところが、顔全体をじっくり隈なく見ているようで、実際には、顔の半分しか見ていない。左側だけです。左側さえ男だったら、右が女であっても全体を男だと思っちゃうんですね。

単純な脳、複雑な「私」 池谷裕二著(朝日出版社)  ISBN: 9784255004327

1970年生まれの脳研究者が、その最新の成果を語った、母校・静岡県立藤枝東高での4日間。

ちょっと久しぶりに面白かった! 「脳ブーム」といわれる本はこれまで何となく敬遠していて、「読まず嫌い」だったけど、これは手にとってよかったです。

まず高校生に対する講義録なので、語り口が平易。脳の認識や記憶の仕組みに関するエピソードが満載で、「へえ」と感心しながらどんどん読み進められる。例えば脳の構造上、見たものの判断に影響するのは左側の視野が中心で、顔の特徴を把握するのも向かって左。従って名画「モナリザ」が神秘的に感じられるのは、よく見ると逆の右サイドだけで笑っているからではないか……とかね。

これはほんの序の口。ほかにも身体感覚と認識との意外に深い関係とか、「心が痛い」という表現の秘密とか、面白い話がたくさんあるけれど、ネタバレは差し控えます。そうこうしているうちに話は展開し、ヒトの脳という器官がいかに少ないエネルギーで、いかに見事な情報処理をしているか、を解き明かしていく。このあたりは自分とは何か、心とは何か、という問いにつながっていてエキサイティングだ。

もちろん簡単に断定できたり、結論づけられたりするテーマではないのだろう。それを認めている、著者の潔い態度が誠実。終盤はかなり難しい内容になっていて、正直、私がちゃんと理解できたとは思わないけれど、欄外のパラパラマンガで図解するといった「伝える工夫」も怠りなく、自分なりにとても楽しい読書でした。(2010・1)

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Comments

こんにちは。
池谷さんの脳関連本はどれも面白いですね。
「海馬~脳は疲れない」「進化しすぎた脳」、そしてこの作品、
とてもスリリングで知的好奇心をツンツン刺激されます。

木曽さん、コメント有り難うございます!
そうなんですよ、だいぶ前に「その数学が戦略を決める」を読んだときみたいな面白さでしたぁ。

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