« 100冊文庫の20冊追加 | Main | 単純な脳、複雑な「私」 »

January 13, 2010

悪意

 容疑事実をすべて認めた彼であるが、ただ一つ、固く口を閉ざしていわないことがある。
 それは動機についてだ。

「悪意」東野圭吾著(講談社ノベルス)  ISBN: 9784061821149

人気作家が自宅で絞殺された。犯人が抱いた、殺人を犯すほどの悪意とは、果たして供述通りのものなのか。警視庁・加賀刑事が真実に迫る。

加賀恭一郎シリーズの第4作。ストーリーを語るうえで、中盤までの半分近くは当事者の手記という形をとっており、それが実は意図的に歪められている。この著者らしい、読者を幻惑する凝った構造がまず見事。しかし、そういうテクニックの妙にさほど気を取られないほど、終盤の展開が面白い。事件の構造が2転3転し、やがて明らかになる悪意の姿にぞくりとする。

加賀刑事って、このころから人間観察が鋭かったんだなあ。彼が教師を辞めたいきさつも語られていて、ファンにとっては興味深い。

奥付をみたら2000年1月の発行。うっかり先に2001年のNHKドラマ版を観てしまい、原作のほうはなんとなく積んだままになっていたけど、ドラマの記憶もだいぶ薄れたし、最近、加賀シリーズ最新作の「新参者」を読んだこともあって手にとった。そういえばドラマではなぜか、刑事役は加賀さんじゃなく別の人物像になってましたね。1996年の単行本をノベルス化、2001年に文庫化。(2010・1)

« 100冊文庫の20冊追加 | Main | 単純な脳、複雑な「私」 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 悪意:

« 100冊文庫の20冊追加 | Main | 単純な脳、複雑な「私」 »