悪意
容疑事実をすべて認めた彼であるが、ただ一つ、固く口を閉ざしていわないことがある。
それは動機についてだ。
「悪意」東野圭吾著(講談社ノベルス) ISBN: 9784061821149
人気作家が自宅で絞殺された。犯人が抱いた、殺人を犯すほどの悪意とは、果たして供述通りのものなのか。警視庁・加賀刑事が真実に迫る。
加賀恭一郎シリーズの第4作。ストーリーを語るうえで、中盤までの半分近くは当事者の手記という形をとっており、それが実は意図的に歪められている。この著者らしい、読者を幻惑する凝った構造がまず見事。しかし、そういうテクニックの妙にさほど気を取られないほど、終盤の展開が面白い。事件の構造が2転3転し、やがて明らかになる悪意の姿にぞくりとする。
加賀刑事って、このころから人間観察が鋭かったんだなあ。彼が教師を辞めたいきさつも語られていて、ファンにとっては興味深い。
奥付をみたら2000年1月の発行。うっかり先に2001年のNHKドラマ版を観てしまい、原作のほうはなんとなく積んだままになっていたけど、ドラマの記憶もだいぶ薄れたし、最近、加賀シリーズ最新作の「新参者」を読んだこともあって手にとった。そういえばドラマではなぜか、刑事役は加賀さんじゃなく別の人物像になってましたね。1996年の単行本をノベルス化、2001年に文庫化。(2010・1)
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