「空飛ぶ馬」
解いてもらったのは謎だけではない。私の心の中でも何かが静かにやさしく解けた。
「空飛ぶ馬」北村薫著(創元推理文庫) ISBN: 9784488413019
女子大生の私と、噺家の円紫さんが「日常の謎」を解く連作短編集。
ついに2009年、直木賞を受賞した著者の、1989年のデビュー作。SNS「やっぱり本を読む人々。」選出100冊文庫の1冊を読んでみた。
謎というより、時にはささいに見える行動の裏にある、人間心理を読み解く筋立て。爽やかな筆致で、デビュー作とは思えない完成度だ。今では私たち読者は著者について、ワセミスOBの年季の入ったミステリファンで、このとき高校で教師をしていてと、人物像を知って読むから、巧さにもあまり驚かない。けれど発表当時は覆面作家で、ペンネームや書く内容から「現役女子大生説」もあったそうだから、読者はさぞ感嘆しただろうなあ。
もう一つ、考えてみれば89年はバブル経済絶頂期。それなのに女子大生の主人公ときたら、美人なのに化粧っけもなく、落語と文学をこよなく愛し、飲み会やらにうつつを抜かすこともなく家では家事をよく手伝う女の子だ。なんて理想的。こういう温かい人物造形が、長く愛される秘訣なのかなぁ、と妙に納得しました。ああ、落語を聴きたい…。(2009・12)
「空飛ぶ馬」 読書日記
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こんばんは。
今までミステリーといえば、殺人事件ありきだと思っていましたが、
本作を読んで、こういうミステリーもあるのだと感銘を受けたことを覚えています。
高野さんのイラストも可愛らしいですよね(^^)
おすすめのシリーズなので、引き続き読んでみてください。
また、覆面作家シリーズはユーモア色が加わり、面白いですよ!
私のブログのリンクを貼っていただきましてありがとうございます。
正式名称はミステリー処【love knot】といいます。
恐縮なのですが、修正していただけないでしょうか?
よろしくお願いします。
Posted by: 翠香 | December 08, 2009 11:47 PM
コメント有り難うございます。
リンク、修正しますね~ 失礼しました!
Posted by: COCO2 | December 09, 2009 12:45 AM
こんにちは。
円紫さんシリーズ、暖かい雰囲気が良いですね。
もう新作は出ないのでしょうか。
年月が過ぎ、敏腕編集者となった「私」と
いつまでも年を取らないような円紫さんの登場する作品がもし出たら
ぜひ読みたいですね。
Posted by: 木曽のあばら屋 | December 10, 2009 07:27 PM
確かに円紫さんは年とらなそうですねぇ。名人と呼ばれているけど、死ぬまで精進です、とか言いそうな気がします。
Posted by: COCO2 | December 10, 2009 10:11 PM