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December 29, 2009

「伊藤ふきげん製作所」

「カノコはつまんない人間だもん」
 カノコはあのころよく言ってました。そして、じつは、わたしにはよくわかるような気がしました、その不安が。

「伊藤ふきげん製作所」伊藤比呂美著(新潮文庫)  ISBN: 9784101312217

思春期って訳もなく不機嫌なもの。詩人・作家である著者が2人の娘の悩み、葛藤、それをなんとか受け止めようとする母の戸惑いぶりを軽妙に綴る。

子育てエッセイの先駆者による新聞連載の文庫化を、ふと思い立って手にとった。小学校高学年から中学という多感な時期に、伊藤家の娘たちは人生の激動に見舞われる。なにしろ母親が離婚、英国人と再婚して、子連れで米国に移住するのだ。娘たちは言葉や生活習慣の壁を乗り越えて、ステップダッドとの関係を築き、新しい友達をつくり、勉強もしなきゃならない。これでストレスを抱えないわけがない。

もっともそれほどの激動の割に、著者が描く母娘の日常は案外普通だ。母は娘の立ち居振る舞いについつい小言を言い、娘たちは不機嫌にむくれる。誰にでも覚えがある光景ではないだろうか。母は子供たちの扱いに困りつつも精一杯愛情をこめて接し、娘は自分の問題を一つひとつ乗り越えていく。リズミカルな筆致が心地よくて、じわっと心が温まる。(2009・12)

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