「新しい労働社会」
近年、少子化対策の文脈で児童手当が取り上げられることが増えましたが、それが企業の家族手当と相補的なものであり、労務提供への対償と生計費保障のはざまを埋める性格を有しているという認識はあまりないようです。しかし、この問題は賃金制度の原則と社会保障制度の設計を同時に解かなければならない連立方程式であり、年功制をやめて職務給にしていくというのであれば、それに対応する分を社会保障給付として拡大していくべき性格のものです。
「新しい労働社会」濱口桂一郎著(岩波新書) ISBN: 9784004311942
旧労働省出身の研究者が、「現実」を見据えて説く雇用問題の処方箋。
「派遣切り」「雇い止め」…。まるで根本から間違っているかのように語られがちなニッポンの雇用も、ある時点では合理性があり、多くの普通の人が恩恵を受けていた。著者はまず冷静に、前提が変わったことを確認した上で、今足もとで何ができるのか、そして将来、どこを目指すべきなのか、を考察していく。
雇用は雇用だけで論じられる「制度」ではなく、社会保障や産業構造や、様々な意思決定システムと密接に絡まっている。その広がりの大きさを思うと、気が遠くなるほどだ。だからこそ、単に諸外国の事例などをひき写すのではなく、叡智を集めて考え抜くべきテーマなのだということを確認させてくれる一冊。(2009・10)
「新しい労働社会-雇用システムの再構築へ」濱口桂一郎著 Kyuoshoublog
[書評]新しい労働社会―雇用システムの再構築へ(濱口桂一郎) 極東ブログ
濱口桂一郎『新しい労働社会』(岩波新書) 9点 山下ゆの新書ランキング
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