「サンデーとマガジン」
講談社が、マガジンの発売をサンデーよりも早めようと印刷所と相談しているというのだ。
「それでは、5月5日から思い切って1か月早めて、4月10日発売にすれば、講談社も追いついて来れないだろう。第1号はもうすぐ完成だし、どこからでもかかって来い、だよ」
ところが、である。印刷所に出入りするスタッフから驚くべき知らせが届く。
「また、1週間、講談社が印刷の予定を繰り上げました!」
「サンデーとマガジン」大野茂著(光文社新書) ISBN: 9784334035037
1959年、同時創刊した小学館「少年サンデー」と講談社「少年マガジン」。そこから約15年にわたる激闘の歴史。
NHKに所属する著者が、両誌の創刊50年を期して放送したドキュメンタリーを出発点として、高度成長期のニッポンとマンガ週刊誌の黎明を描き出す。
いやー、面白かった! マンガ世界を切り開いたライバル同士の、丁々発止のしのぎ合いが、とにかく熱い。時代はまさに「20世紀少年」が描いた少年期の世界。日本がいまや世界に誇るサブカルチャー、あるいはメディアビジネスの方法論、ひいては昭和の世相をめぐる、貴重な証言が満載だ。「巨人の星」と「オロナミンC」の関係って、こんないきさつだったのか。
しかし著者の語り口は、詰め込まれたエピソードや当事者たちの発言を、歴史的な出来事としてうまく整理しようとは、あえてしていない。例えば、当時はマンガがまだ市民権を得ていなかったゆえにゲリラ性があった、といった分析とか解釈とかは控えめだ。むしろ、いつの時代、どんな舞台であっても、やる奴はやるんじゃないか。そんなメッセージが行間から響いてくる。単に蘊蓄に触れる興味を超え、通読して、なにやら元気が出る一冊。(2009・9)
『サンデーとマガジン -創刊と死闘の15年』(大野茂) 馬場秀和ブログ
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