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August 13, 2009

「怪談牡丹灯籠」

静におしなせえ、隣はないが名主のない村じゃアないよ、お前さんがそう哮り立って鯉口を切り、私の鬢たを打切る剣幕を恐れて、ハイさようならとお金を出すような人間と思うのは間違えだ、私なんぞは首が三ツあっても足りねえ身体だ

「怪談牡丹灯籠」三遊亭円朝作(岩波文庫) ISBN: 9784003100318

旗本・飯島家の娘、お露の悲恋と、飯島家に仕える草履取り・孝助の数奇な運命。

夏といえば怪談、というわけで、SNS読書会の課題本となった円朝の名作を読んでみた。いきなり坪内逍遙の「序」があって、古文なんて高校以来だし、難しそうだなぁと身構えた。けれど、本題の落語に入ると話し言葉で、笑いもまじえた名調子。案外すいすい読んだ。

初めて出版されたのは明治17年。「口演速記」という、当時新しかったメディアのスタイルが人気を呼び、のちの文学や演劇に大きな影響を与えた、というのが興味深い。

ストーリーについては、幽霊なのに足があるお露がカランコロンと下駄を鳴らし、夜道を恋しい男のもとへと通ってくる、というのが有名な怪談部分で、これは比較的前半で終わってしまう。「四谷怪談」「皿屋敷」と並ぶお化けの定番だから、さぞゾッとするかと思ったら、そうでもない。むしろ後半、孝助を取り巻く生きた人間たちの、むき出しの欲のほうがよっぽど怖い。なんと愚かで、罪深いのか。複雑にこんがらがった、ワイドショー的な人間模様が秀逸だ。

今や日常では失われてしまった言葉が、たくさん出てくる。悪党が開き直ってまくしたてる啖呵や、客の迎え方、見送り方…。庶民がかつて持っていた日本語の豊かさをかいま見る気分だ。解説・奥野信太郎、注・横山泰子、わかりやすい地図付きの改版。(2009・8)

 シネマ歌舞伎 怪談 牡丹燈籠  速映画批評

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