「恋文の技術」
せっかくの機会だから、俺はこれから文通の腕を磨こうと思う。魂のこもった温かい手紙で文通相手に幸福をもたらす、希代の文通上手として勇名を馳せるつもりだ。
「恋文の技術」森見登美彦著(ポプラ社) ISBN: 9784591108758
京都の大学院生、守田は教授の命で、ひとり能登の実験所に派遣された。そこで何故か文通の才を磨こうと思い立ち、遠く京都にいる友人やら先輩やら妹やらに宛てて、どしどし手紙を送りだす。その書中で語られる、あほらしくも切ない悩みと恋。
主人公、守田が書いた手紙のみで構成する「書簡体小説」だ。滑り出しこそ能登の事物について語ったり、文通相手の相談にのったりしているが、そこはモリミー、ほどなく情けない事態が続発して、言い訳とかに追われるはめになる。とにかく抱腹絶倒なので、電車の中とかで読むときは挙動にご用心。
手紙によって宛先の文通相手が違うので、同じ出来事が書き手である守田の都合で少しずつ違うニュアンスで語られ、だんだん「ひとりパラレルワールド」になっていくところが面白い。いずれにしろ、主人公が未熟で情けなくて、愛すべき奴だという事実は隠しようがないんだけど。
今回のモリミーは、あらぬファンタジー方向に妄想が炸裂することはなく、爆笑しているうちにパラレルワールドが見事に収束していく。終いには、なんだかコミュニケーションとかについて、ちょっと考えちゃったりするほどだ。まあ、くだらないと言ってしまえばくだらないんだけど、うまいなあ。(2009・7)
『恋文の技術』(森見登美彦) 馬場秀和ブログ
『恋文の技術』 森見登美彦 固ゆで卵で行こう!
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