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June 17, 2009

「1Q84」BOOK 1 BOOK 2

でも見かけにだまされないように。現実というのは常にひとつきりです

「1Q84 a novel BOOK 1<4月-6月>」「1Q84 a novel BOOK 2<7月-9月>」村上春樹著(新潮社) ISBN: 9784103534228 ISBN: 9784103534235

近未来ならぬ近過去「1984年」を舞台にした、予備校教師で作家の卵である天吾とスポーツインストラクター青豆、ともに30歳の男女の物語。

著者7年ぶり書き下ろし長編にして、大ヒット中の小説を読む。一つひとつのシーンの説明が丁寧で、饒舌。だから4月から9月までの物語でbook1、book2合計1000ページを超える長編となっているが、全然長く感じない。短い章を重ねて、同時進行する主人公二人の1Q84年を交互に語っていくリズムが心地よい。

もっとも描かれる出来事は決して、心地いいものではない。ねじれた信念やら、弱いものに対する暴力やらの描写が容赦なくて、ちょっとしつこく思えるほど。ああ、この著者はこういう感じだったなあ、と思い出す。でも、二人の身にふりかかっていることが気になって仕方ないから、どんどん読み進んでしまう。

青豆と天吾の造形には、そんな風に読む者を物語世界に巻き込む、強い引力がある。特に青豆。へんてこな名字と、フェイ・ダナウェイみたいと描写されるきっぱりとした格好良さが秀逸だ。
二人はそれぞれ心に傷を抱え、情熱を秘めながらも、外見上はできるだけつつましく、目立たない日常を送ってきた。しかしある日、自分の周囲の世界が何やら決定的に、見慣れた現実とはズレてしまっていることに気づく。いったい何が起こっているのか。ちっぽけな一個人が、このヘビーな運命に抗うことは難しい。ズレてしまう前の世界に戻ることも、どうも不可能そうだ。無力感に襲われつつ、それでも自分の身に起きていることから決して目をそらすまい、と思う。そんな二人の軌跡が運命的に交差する場面の、息を呑む静謐さ。

例によって全編に、さまざまなミステリーが散りばめられている。「リトル・ピープル」とか、「空気さなぎ」といった不思議な存在はいったい何を意味するのか。謎をどう解釈するかは読む人、読むタイミングによって、いかようにも変化しそうな気がする。自分の中でもこれから、物語がどう変化していくのかが楽しみだ。(2009・6)

1Q84 BOOK 1、 1Q84 BOOK 2  【村上春樹】 とんみんくんの読書履歴
村上春樹『1Q84』 「石板!」
「1Q84」村上春樹 本を読む女。改訂版

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こんなにも淡い恋があったんですね。このふたりぜひとも再会させてあげたい。早くもBOOK3とBOOK4の発売の予感のする終わり方です。早く続きが読みたい。 [Read More]

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