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June 24, 2009

「おそろし」

 わたしは、人の心というものがわからなくなってしまいました。人というものが、闇雲に恐ろしくなってしまいました。そう言って、おちかはようやく口を閉じた。
 しゃべってしまって、気が済んだ。一方で、自分で自分に驚いていた。あたしはなぜ、こんなことを打ち明けてしまうのだろう。

「おそろし」宮部みゆき著(角川書店) ISBN: 9784048738590

川崎宿の旅籠の娘、おちか17歳は事情があって、叔父夫婦がいとなむ神田三島町の袋物屋、三島屋に身を寄せている。そこでひょんなことから、市井の怪談話の聞き役となる。

正調・宮部節の時代小説を読んだ。可憐で健気なおちかを主人公に、まがまがしい運命に翻弄される庶民の心を、いつもながら丁寧に描いていて引き込まれる。様々な事件で命を落とし、この世に思いを残した人。後に残されて深い後悔に苛まれ、心を閉ざした人。ときに壮絶で哀切なテーマは、著者の現代ミステリーともつながっている。

そんな悲しい目にあった人々が、「変調百物語」と銘打った「語る」「聞く」という行為を通じて、苦しみながらも再生への糸口をつかんでいく趣向も、現代に通じる感じで興味深い。希望を感じさせるラストが爽やかだ。小泉英里砂さんのイラストもチャーミング。09年1月から新聞でシリーズ第2作を連載。(2009・6)

 『おそろし』宮部みゆき 明日は晴れるかな♪

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