「介護現場は、なぜ辛いのか」
きっと、介護現場には、注がれる「愛」が足りない。入居者ばかりでなく、介護士に対してもーー
「介護現場は、なぜ辛いのか」本岡類著(新潮社) ISBN: 9784104083046
元雑誌編集者で作家の著者は、実家の母が倒れたのをきっかけにヘルパー資格を取得。特別養護老人ホームで週2日の非常勤職員として働き始める。50代の新人おじさんヘルパー体験記。
仕事としての介護について、様々な問題点を指摘している。入居待ちが300人もいるほどニーズがあるのに、予算も人手も足りない施設。職員は不規則な勤務でかなり体力が必要なうえ、様々な事故のリスクなどと向き合わなければならず、心身ともに負荷が高い。しかしその処遇といえば、募集広告によれば正職員月18万円、パートの時給850円。仕事の実態に、全然釣り合っていない。技術と経験が求められる専門職としての、処遇の体系も未整備だ。現場には時として、余裕の乏しさから来る非効率や、士気の低下がはびこる。
ヘビーな内容なのだが、意外に読み心地は暗くない。著者がお年寄りたち、そして最前線の介護職員たちに対して、一貫して温かい視線を向けているからだろう。登場する認知症のお年寄りの言動は奇想天外だけど、どこかしたたかでチャーミング。不器用な著者を怒ってばかりいる上司も、尊敬すべきプロだ。誰もが当事者になりうる介護について、前向きな気持ちで考えるきっかけになりそうな一冊。(2009・6)
介護現場は、なぜ辛いのか--特養老人ホームの終わらない日常/本岡類 しょ~とのほそボソッ…日記…
« 「ガリレオの苦悩」 | Main | 「1Q84」BOOK 1 BOOK 2 »
Comments