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April 15, 2009

「上弦の月を喰べる獅子」

街に視線を移すと、街そのものが、無数の螺旋と化そうとしていた。
以前にも、このような、螺旋に埋もれた街を見たのではなかったか?

「上弦の月を喰べる獅子」夢枕獏著(ハヤカワ文庫) ISBN: 9784150305024 ISBN: 9784150305031

いたるところに螺旋を幻視するカメラマンと、岩手の詩人という、ともに胸に修羅を抱えた二人の人格が融合。異界に足を踏み入れ、人は幸せになれるのか、という根元的な問いを繰り返しながら、高みを目指す。

SNS「やっぱり本を読む人々。」の企画「百冊文庫」から、気になっていた上下巻を読む。考えてみると、伝奇冒険ファンタジーといったものを初めて読んだかもしれない。は虫類様の生き物が続々出てくるシーンは、正直、ちょっと苦手。

でも、なんだかよく理解できないながら、進化の科学と仏教の思想が読む者の頭の中で二重螺旋状に絡まっていって、そのあたりの腕力は凄い。全編にわたってぎっしりと詰め込まれたイメージは、国民的詩人の伝記から遠くインドの神話まで、地球規模かつ縦横無尽だ。ちょうど観劇したばかりのオペラ「ワルキューレ」を彷彿とさせる展開もあり、最後はまるで強い光を浴びたような、突き抜けた読後感があった。第10回SF大賞受賞。(2009・4)

「上弦の月を喰べる獅子」夢枕獏  本を読む女。改訂版

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