« 「ポトスライムの舟」 | Main | 「再発」 »

March 22, 2009

「星々の生まれるところ」

サイモンは彼女のそばに立った。今この期に及んでも、自分たちはうまく行かないーーさりといって、終わりにもできないデートをしているような感覚があった。

「星々の生まれるところ」マイケル・カニンガム著(集英社) ISBN: 9784087734492

ニューヨークを舞台に、ウォルト・ホイットマンの詩からの引用を縦糸として綴る過去、現代、未来の中編3編。

SNS読書会の3月課題本を読む。読む人によって、とてもいろいろなテーマを見つけることができる小説だと思う。

個人的に3編にはいずれも、背景に社会を覆う不安が感じられた。19世紀半ばの人間性を失いつつある産業社会とか、「9・11」後のテロへの恐怖とか、メルトダウン後の荒廃とか。それぞれ登場する女性や男児が、逃走を試みるけれども、不安に対して個人はどうしようもなく無力だ。その無力さ加減は、やりきれないほどで、1編目は正直、読み進むのに少し難儀した。

しかし緊迫したミステリー風の2編目、SFロードムービー調で、少しコミカルな3編目と、どんどん勢いがついた。きっと人と人は、わかりあえない。人造人間と異星人も同様だ。切なさが、リアリティをもって胸に迫ってくる。
でも、わかりあいたいという思い、希望は決して消えない。星の誕生を見に行くのは、そういう壮大な「繰り返し」を引き受けるということだろうか。3編を通じて登場する小道具や、共通する登場人物の名前といった仕掛けが、何気ないようでいて緻密だ。南條竹則訳。(2009・3)

廻る命の環~『星々の生まれるところ』  真紅のthinkingdays

« 「ポトスライムの舟」 | Main | 「再発」 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「星々の生まれるところ」:

« 「ポトスライムの舟」 | Main | 「再発」 »