「人形有情」
体をかわすようにする時、首(かしら)が、よそへ行ってる人が多いです。
渚の方が上手、良弁が下手に入れ替わる時も、目線が渚の方から外れたらいけません。
「人形有情」吉田玉男・宮辻政夫(聞き手)著 ISBN: 9784000242622
人間国宝で不世出とうたわれた人形遣い、吉田玉男の芸談聞き書き。住大夫さんに続いて、文楽シリーズで読んでみた。
修業時代や先輩後輩との思い出を語るところは、真面目で控えめで、飄々とした印象。しかし後半、役柄の解説になると、やっぱり凄みがある。後ろから人形を遣っていて、顔が見えないのに目線がぶれず、きめ細かい動きを計算し尽くしているという。あえて、じっとしていて存在感を示す、辛抱の心も面白い。
文楽の大夫はオペラ歌手のようだけれど、オペラと違うのは一人で何役もこなし、ト書きまで語るところ。役に没入し過ぎない。人形遣いも、あくまで人形を通して演じるのであり、真に迫って喜怒哀楽を表現していても、語り口はどこかクールだ。本当に不思議な芸。生で観ることができないのが残念だ。(2009・3)
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