「聖女の救済」
こんな犯人はいない。古今東西、どこにもいない。理論的にはありえても、現実的には考えられない。だから虚数解だといったんだ
「聖女の救済」東野圭吾著(文藝春秋) ISBN: 9784163276106
IT企業社長が自宅で毒殺された。その驚くべき真相。
人気の探偵ガリレオシリーズの長編最新刊。380ページ近くを、二日間という、遅読の私としてはあっという間に読み終わった。やはり、この読みやすさは半端じゃない。
被害者の極端な造形とか、いつもは手堅い草薙刑事が一番の容疑者とほとんど一瞬にして恋に落ちるとか、ちょっとありえない、と感じる部分もあるのだけれど、読みやすさのあまり、気にならない。
うまいのは、そういう無理めの設定や、登場人物それぞれの思いが、いちいち謎解きにリンクしていて、最後にはすべてのピースが残さず使い切られ、すっきりと収まるところ。どちらかと言えば、こぢんまりしているけれど、きれいなジグソーパズルを完成したような心地よさだ。情念を描きつつ、描き過ぎない職人芸。
登場人物のなかでは女性刑事、内海薫の生意気加減がいいな。多くのブロガーが書いているように、主要な登場人物がドラマ、映画の配役と重なってしまってイマジネーションが制約されるけど、まあ、許容範囲です。
そういえば08年の東野さんは、映画、ドラマ2作も面白くて、出版とうまく循環し、人気作家というより「東野ビジネス」という別次元に突入した感じでした。ガリレオの短編集も読まなくっちゃ。(2009・1)
« 「白川静」 | Main | 「文楽のこころを語る」 »
« 「白川静」 | Main | 「文楽のこころを語る」 »
Comments