「なほになほなほ」
物心つかんうちから北新地を歩き廻り、三味線や唄や浄瑠璃を子守歌に育ちました。これではませまんなあ。
「なほになほなほ 私の履歴書」竹本住大夫著(日本経済新聞出版社) ISBN: 9784532166793
1924年生まれの人間国宝にして、現役ばりばりの人気大夫が、味わい深い大阪弁で語る自伝。
文楽初心者として、平成11年の新聞連載を元にした住大夫伝を楽しむ。
実父が文楽の三味線弾き、養父が大夫、実母と養母は芸者の美人姉妹。育ったのはお初天神の裏手というから、この人は骨の髄まで洒脱だ。お茶屋遊びが過ぎて嫁はんにとっちめられる、やんちゃなエピソードもチャーミング。でも、とことん浄瑠璃が好きな稽古の虫で、後輩にはめっぽう厳しい。文楽の標準語は関西弁、楽屋で「東京なまり」でおしゃべりなんて許せん、と相変わらず激しくおかんむりだ。こういう人がいて、リアルタイムでその芸を鑑賞できるというのは、幸せだなあ。
桂米朝や片岡仁左衛門らとの対談と、300年ぶりに復曲した浄瑠璃節の元祖「源氏十二段」の床本を収録。(2009・1)
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