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January 18, 2009

「水の家族」

 草葉町自慢の三重連の大水車が回っている

 水車のひとつは惑星のように回り、もうひとつは銀河のように回り、あとのひとつは大宇宙のように回り、全体としては人間の運命のように回って、清冽な水を盛大に汲みあげている。

「水の家族」丸山健二著(求龍堂)  ISBN: 9784763006356

三十歳を目前にひっそりと生を閉じた男の意識が、郷里を飛翔し、家族の過去と現在を見つめる。

あるSNS読書会コミュの課題本。敷居が高い先入観があり、手にとったときはおそるおそるだったけど、意外にするすると読んだ。作家による再構成復活版だそうです。
一ページに一つか二つの割で独立した一行を挟み、詩のようなリズムで綴っていく独特のスタイル。安曇野に住む著者の手になるものか、ところどころに掲載されたモノクロ1ページの植物写真もアクセントになっている。

競走馬の牧場を抱えた餓鬼岳、漁師が行き交う天の灘に取り囲まれた草葉町に、「泣いて流れる」忘れじ川。この箱庭のような原風景には、初めからずっと、すべてを諦めた雰囲気が色濃く漂っている。まあ、主人公はある事件がきっかけで家を飛び出したものの、作家になる夢もかなわず、都会で命をすり減らしたという設定だから、深い諦念が漂うのも致し方ない。

しかし残された家族は終盤に向け、それぞれ屈託を抱えながらも不思議な生命力をみなぎらせていく。それを包み込むような、町をめぐる水の循環。

三浦しをんさんの愛読書としても知られる。個人的にはたぶん、よくわかってはいないのだけれど、なんだか不思議と読後感のいい一冊でした。(2009・1)

『水の家族』丸山健二  ココロの森
丸山健二さん、『水の家族』 本読みの日々つらつら

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