「白川静」
いわば漢字は、今日のわれわれが失ったかもしれない多くの記憶をよみがえらせる「時空の方舟」だろうと言っているわけです。漢字はまさに四角い方形の姿をした「意味の舟」たちなのです。
「白川静 漢字の世界観」松岡正剛著(平凡社新書) ISBN: 9784582854404
「千夜千冊」で知られる著者が、熱く綴る「白川学」入門書。
松岡さん、のりのりです。大胆、孤高の学者の人物像と業績を語るのが、嬉しくてしかたないみたい。漢字の起源の研究者、というくらいの知識しかなかった情けない私も、なかなか楽しく読んだ。
関係ないけど、タイムスリップをテーマにしたジャック・フィニイの小説「ふりだしに戻る」を連想した。白川静という人は、具体的な文字のかたちを丹念にたどることで、もう、紀元前1000年とか500年とかの古代に飛んでいって、古代人たちの願いや祈りを生々しく呼吸してしまう。強靱なイマジネーションと、それを支える知力の深さ、鋭さを備えた人だったんだろう。
面白いのは、漢字そのものに象形文字、表意文字として長い歴史を生き延びた、類い希な生命力があって、それが白川静の誇り高い軌跡と、どことなく重なる印象があることだ。そして、そのタフな文字を異国から取り入れた側である日本文化の、融通無碍さに関する考察も興味深い。漢字に独自の読み方をどんどん付け足し、使いこなし、かなやカナまで生み出した。なーんにも考えていない私だって、そういう文化の恩恵を日々、受けているんですよ。驚き。
欄外に並んだ、妙なかたちの甲骨文、金文の図も興味津々だ。(2009・1)
はじめまして
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Posted by: sachio43 | February 15, 2009 10:20 AM