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November 20, 2008

「ボートの三人男」

われわれには、働く時間も必要だが考える時間も必要だ。生活という日光を楽しみながら、一杯飲む時間も必要である。風の神がわれわれ人間の心の琴線をかきならして奏でる風の音楽に、耳かたむける時間も必要である。それからまた……
 ごめんなさい。いったい話はどこまで行ったっけ?

「ボートの三人男」ジェローム・K・ジェローム著(中公文庫) ISBN: 9784122003514

著者とおぼしき「ぼく」と、友人のジョージ、ハリス、そして飼い犬のモンモランシーの三人と一匹が、気晴らしのためボートに乗り込んで、2週間のテムズ河の旅に出かける。

英国の著名なユーモア小説。SNS「やっぱり本を読む人々。」の推薦文庫を読んでみた。出版は1889年、文庫の初版が1976年で、2007年までに23刷を重ねる定番の一冊。しかも訳者は丸谷才一、解説が井上ひさしという、いってみれば手練れ揃いだ。「文庫を読む楽しみ、ここにあり」という感じ。

内容は、期待に違わぬ愉快さだ。大筋は知的な観光案内で、河をたどりながら美しい郊外の風景や、マグナカルタゆかりの地といった土地それぞれの歴史の蘊蓄が語られる。また、綱の操り方や必要な装備など、ボート遊びに関する実践的指南書でもある。

しかし、話はたびたび脱線。連想がおもむくまま、これまで見聞きした滑稽なことや失敗話、妙な親戚やら知人やらのエピソードが次々飛び出して、とどまるところを知らない。そして著者の構えは、どんな事態に直面しても全く深刻ぶらず、「あらまあ」と肩をすくめて苦笑いしているよう。この軽妙さ、余裕があるから、読んでいてちっとも古さを感じないのだろう。日本だったら、夏目漱石のユーモアのようなものだろうか。(2008・11)

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