« 「パパ・ユーアクレイジー」 | Main | 「ジョーカー・ゲーム」 »

October 15, 2008

「聖母(ホスト・マザー)」

 細い足が力強く大地を蹴る。そのたびに一つに結んだ髪の毛が背中で跳ねる。オレンジのサリーの裾が翻る。まるで、生命そのものが駆けていくようだ。
 ふいに身体の奥から、熱いものが突き上げてきた。

「聖母(ホスト・マザー)」仙川環著(徳間書店) ISBN: 9784198625771

病に見舞われながら、「子供を持ちたい」と願った平凡な一女性と、その周囲とが直面する、様々な苦悩。

なんだか生殖医療のシミュレーション小説のようだ。行換えが多く、300ページ強と、さほどボリュームがあるわけではない1冊に、「産む選択」をめぐる困難とか、当事者たちの激しい心の揺れとかをぎっしり詰め込んである。そして最後にしっかりと、謎も仕掛けられている。

同じ著者の「無言の旅人」に続く重いテーマだと思うが、今回も、というべきか、筆運びはちょっと淡泊過ぎるほど。読む前は、こんなテーマだから、怒濤の感動や共感を想像しそう。だけれど個人的にはそういう感じはあまりしなくて、むしろ「親がもつ生命力」といったものについて、しみじみと考えてしまった。それが狙いなのでしょうか…(2008・10)

 

« 「パパ・ユーアクレイジー」 | Main | 「ジョーカー・ゲーム」 »

Comments

Post a comment

Comments are moderated, and will not appear on this weblog until the author has approved them.

(Not displayed with comment.)

TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「聖母(ホスト・マザー)」:

« 「パパ・ユーアクレイジー」 | Main | 「ジョーカー・ゲーム」 »